テーマ:財政再建
最近、財政再建の話がまた非常に活発になっている。増税すればいいのか、歳出削減すればいいのかといったような短絡的な議論が多いがもう少し経済学を考慮した議論であるべきだ。これから財政再建をするために、増税すべきだという人は増税による景気への跳ね返りを考慮していない。歳出削減にしても同様で、増税せずに歳出を削減すると同じく景気が悪くなる。よって増税、歳出削減をしながら、どの様にして景気を悪化させないかというのが問題になる。
上手く行く財政再建というのは、この「財政再建の五輪」と呼ばれるグラフを見るとわかる。まず生産性の加速である。 財政再建をやりながら生産性が加速しているなら景気は良くなっていく。これはサプライ・サイドの方からやるという手もあるが、ここ十年間での一人当たりの生産よりも1%高い生産性の伸びを促す税制や規制改革を行うべきだ。
二つ目としては、デフレ脱却が挙げられる。なぜデフレ脱却が大事かというと生産性の加速に貢献するというのが一番大きい。今の実質金利がかなり高い。よってデフレ脱却すれば、実質金利が下がり、名目金利が若干上がるかもしれないが、デフレ脱却ほど直近には上がらない。実質金利が下がると設備投資など上がっていく上に生産性が更に加速する。
三つ目は歳出の再編だ。今の歳出は生産性にあまり貢献しないもので、むしろR&D、教育といったように将来の日本に貢献するような歳出を増やし、あまり貢献しない歳出や無駄遣いなどを減らしていくべきだ。
四つ目としては、税制・歳出を使って働くインセンチブを促す税制改革が必要だ。今はリスク・テイクを促すような税制を殆どやらない。配当金の二重課税もあるように、現状の税制では生産性は絶対加速しないので、人が働くことを促すような税制に変えるべきだ。もちろん消費税を上げるということも必要かもしれないが、そういう事をやりながらも生産を促す税制に変える必要がある。
五つ目だが、選挙改革だ。選挙改革は一見財政再建と関係ないように見えるが、実は非常に肝心な部分だ。なぜかというと国会議員はこのような政策をやろうと言う時に、当然自分の選挙区をみる。現在、選挙では一人一票ということになっていないので、余計に高齢者達の代表という形になってしまう。この現状を直さなくてはデフレ脱却の政策はできない。よって選挙改革を実行して全ての外の政策を採択できるような政治構造を作らなくてはならない。
日本の財政再建が上手く行くかどうかということは、この五つを同時にバランスの取れた形でやるかやらないかということなのである。
社会保障と税の一体改革について話したい。6月に答申を出すということが改めて確認されたが、良い答申になるかどうかは国民に選択肢を見せるかどうかで決まる。これまでは増税ありきという雰囲気であったが、もしその様な答申になるのでれば失敗である。「我々与党はこう思っている。」と言ったことを勿論書いてもいいが国民にどういう選択肢があるかということを見せるのが答申の一番大きな目的といえる。増税と歳出カットの組み合わせは色々あるが、例えば一番極端な選択肢として増税をせず消費税を今のまま5%にしておく場合、Primary Balance、政府の基礎収支を約38兆円に抑えないといけなくなるため、歳出を2割カットする必要がある。これはどういうことかというと、例えば医療年金など社会保障支出が100兆円くらいあるのを80兆円にしなくてはならない。
もう一つの選択肢としては、歳出をこのまま、つまり医療年金などの社会保障支出を100兆円のままにするのに対し、大きな増税をする。この場合に消費税をどこまで上げる必要があるかというと、24%まで上げなくてはならない。加えて答申に書かなくてはならないこととして、財政再建をした場合に、勿論これは緊縮財政になるので、これが景気にどれくらいの影響があるのか、そしてその絡み合い効果、この二つを入れて国民に選択してもらうの必要がある。
このような事から6月の答申が非常に大きな意味を持つことになるのだが、国民に選んでもらえる内容になるかどうかにより答申が紙くずになるか素晴らしいものになるかが決まる。
今、政府、首相が最もすべきことは、"デフレ克服宣言"を出すことである。今後二年間で日本は必ずこのデフレを克服する、と責任を持って政策を展開していくことが求められているのである。その為の具体的政策とは何か。以下の二つが考えられる。
まず、財政政策で需給ギャップを埋めることである。その為には11、12兆円規模の補正予算を出し続ける必要がある。財政が赤字であるのにまた国債を出すのかといった反論も予想されるが、このまま10年間赤字が続けばどちらにしても300兆円近い国債を出すこととなり、そうであるのなら政策によってデフレを克服することで累計の国債発行額は少なくすることができる可能性がある。将来の展望のある政策をとることが財政当局に求められているのである。
次に、金融政策である。その政策の中身自体は専門家たる中央銀行に任せるべきであるが、政府として明確な目標指数、物価目標を課すことが必要だ。多くの国が既にそういった政策を行っており、日本も思い切った目標を設定することが重要である。その為に日銀法を改正することも視野に入れるべきだが、それには時間がかかる為、まずは政府で合意し、その後時間をかけて日銀法を改正していけば良い。
このように、需給ギャップを埋めること、日銀に物価目標を課すこと、は経済学の基礎中の基礎であるが、日本はそれを行っていない点に問題がある。政府にはそのような状況を解決する為にも、ぜひ"デフレ克服宣言"を出して頂きたい。
内閣改造により第二次菅内閣が発足し、その人事面に注目が集まっているが、その前に、発足から4ヶ月での内閣改造となった根拠、理由を政府がはっきりとさせる必要がある。改造を行った正統性が求められるべきなのである。
一方、中身に関しても当然問題点が見受けられる。内閣改造の目的として、"経済財政と社会保障の一体改革"を挙げているが、今回経済財政担当大臣となった与謝野氏はかつてその改革を行わなかった大臣であり、その点においても正統性が問われる。
さらに、与謝野氏がメディアなどで"政策通"と称されているが実際は官僚の代理人として政治的立場を強めてきた"官僚通"の側面が強いことからも、今回の内閣改造が政府による政治主導から財務省主導へと舵を切った転換点であることは明らかである。結果として1997年を思い起こさせる"悪しき増税"路線へと一歩踏み込んだことに強い危機感を持たねばならない。
民主党は昨年の衆院選に際し、掲げた公約の実現の為に必要な予算が16兆8000億円であるとしたが、同時にその予算調達の為に増税や国債の増発も行わないことも明言してきた。
ではどこから予算を確保するのか。その具体的方法として、事業仕分けが挙げられたのであった。もちろん無駄の削減は必須であり、事業仕分け自体の意義・効果は評価できるのだが、その事業仕分けでは目標とした金額に到底届かないことも明らかとなってしまった。
このままでは公約を見直すか、増税・国債発行を行わざるを得ないが、結果として、期待され目立った事業仕分けによって民主党の公約の破綻が明らかとなったのは皮肉なことである。
最近、日本航空が国内線・国際線合わせて45路線の廃止を発表し、いよいよ大がかりなリストラが始まったかのようだが、実際はそうではない。廃止される国内の30路線はもともと不採算で不要な路線であり、国際線についても 目立って減便が増えている訳ではない。
だが、そもそも日本航空が国の支援を受けるにあたり、三年での業績回復、株式再上場を掲げている以上、新たなコストが発生する大がかりなリストラを行うことはできず、従って、価格を下げてでも席を埋める安売り競争、それも公的資金という国のお金を使っての安売り競争をするしか現状として方法がないのも事実である。そしてこのままでは日本航空という一企業を再生させる為に、日本の航空産業を衰退させてしまうということに成りかねない。
ではどうすべきか。ここで政治的主導を行うことこそ、政府の役目である。具体的には前原大臣が3年間という制約を解けばいいのではないか?なんにしろ、これだけの公的資金が入っているのであるから国益第一であるべきであるが、国がはっきりと宣言しなければ、JAL問題の迷走と中途半端な再生計画を修正することはできないであろう。
事業仕分け第二弾の前半が終了したが、まったく評価できない。
その理由は、"事業仕分けの目的"が不明確である為である。予算削減なのか、天下り撲滅なのか、またはマニフェスト通り独立行政法人(以下:独・法)の撤廃であるのか。それらが明確にされぬまま、前回と同様、個別の事業の個別の無駄の削減を行っただけであった。
独・法の無駄を国民に伝えることができた点は良かったが、"独立行政法人"という仕組み自体は六月の行政刷新会議を経た後もなくならない可能性が高く、何の為の事業仕分けであったのか疑問が残る。
そもそも行政刷新会議に向けての準備の側面が強かったのであれば、今回の事業仕分けは何故公開されたのか?高速道路値上げも郵政の実質再国有化もまったく公開されずに決定されたが、何故この事業仕分けだけ公開して行ったのか?
「何千人の来場者、何十万人のネット視聴者」がいたことに触れた枝野大臣のコメントから透けて見えたものは、選挙を見据えた"見せ物"としての事業仕分けという本質ではなかっただろうか。
4月23日から始まる第2弾の事業仕分けでは、独立行政法人、公益法人が主な仕分け対象となるようだが、その内容に不安を感じている。
マニフェストでは当初、両法人に対して抜本的な見直しをする旨を謳っていたが、実際は参院選への影響や支持率の上昇を見据えて、世間ウケ・ワイドショーウケする天下りや無駄遣いへの仕分けに傾注してしまうのではないか。
だが、仕分けの本来の目的である財政再建の為には、両法人は撤廃をベースとした議論があって然りであり、その点からも私たち国民は、今回の事業仕分けの真の狙いを注意して見守る必要がある。
ある雑誌で、このままでは消費税30%もいたしかたない、そのくらい厳しい財政状況である旨の発言を行った。
当然、重税化は好ましくはないし、それを避ける為の政策こそが今必要である。
日本は2009年度53兆円の国債を発行したが、それを消費税増税で補完しようとすると、25%の消費税となる。つまり現時点で日本は消費税率25%の実力の国なのである。
さらに子供手当や、団塊世代が65歳に到達することによる年金・医療負担の増加が加われば、重税化は免れられないであろう。
政策に打ち出の小槌はない。地道な歳出削減、民間への権限移譲など、やるべきことをやらねば、日本は低福祉・重税国家へと突き進みかねない。
日銀が金融政策に関して大がかりな処置を施しているが、金融政策だけではデフレは止まらず景気も回復しない。
金融政策と財政政策、構造改革・規制改革を交えた政策のバランスが重要である。
もちろん急激な財政再建をすべきではないが、徐々に緊縮財政を行うことで債券市場の爆発を避けることは必要である。
また、緊縮した財政を埋め合わせる為に農業改革など構造改革・規制改革も重要である。
これら三つの政策をバランスよく展開していくことが日本経済回復の鍵となるであろう。
デフレ悪化が進み、動きの遅さを批判する声も出る中、ようやく日銀が重い腰を上げ始めたが、その背景には民主党の影響を読み取ることが出来る。
民主党が政府見解としてデフレ対策を打ち出し、日銀も都合上それに歩調を合わせた形だが、市場には歓迎される動きである。
では、日銀の次の一手はなんだろうか。
過去に成功した金融緩和の手法が参考となるが、最近日銀が行った物価安定の定義の変更などをいかに反映した金融政策となるのか、金融市場は注意深く見守っている。
新設の行政刷新会議による事業仕分けは、プラス・マイナス両面での評価ができるだろう。
これまでブラックボックス化されていた予算編成に内在する問題点を白日の下に曝すことが出来たことは評価に値する。
だが、そもそもスーパーコンピュータ問題に表象されるように、すぐ効果が見えない=政策・政治判断が必要とされるテーマは今回の様な作業には向いていない。
その境界を混同せずに政府の方向性を明確に示し、今後より一層行政の無駄を省いていくことを期待する。
民主党政権による"事業仕分け"が話題となったが、今回の有り様では"小さな無駄を削って大きな無駄を産み出す"ことになりかねないと懸念している。そもそも事業仕分けは地方自治には向くが、大きな戦略判断には馴染まない。子供手当や高速道路問題を扱わないことも疑問であるし、国としての明確な方向性が欠如したまま、政治家が官僚をたたく見せ物として消費された感が否めない。
いよいよ民主党政権が誕生する。だが民主党のマニフェストにおいて成長戦略の不足は随所で指摘されている上、歳出削減にも消極的に見え、このままでは重税 国家へと突き進むことは明らかである。今後、経済と財政をいかに両立させていくのかが国家戦略局の重要な役目となってくるであろう。
(2009.09.11 08:50掲載)
財政再建の為に、"成長か増税か"といった論点で議論するのは不毛である。経済の拡大(成長)による増収、歳出の削減、必要な増税、これらが揃わなければ再建は出来ない。この組み合わせの手順についての議論こそが財政再建には必要である。
(2009.07.31 09:20掲載)
財政再建にまつわるトピック